総務担当の佐藤です。
「今年も夏祭りの季節ですね」
回覧板でその文字を見るたび、私の胃はキリキリと痛んでおりました……。
実は私、絵心というものが全くないのです。
若い頃から美術の成績は「2」。
それなのに、なぜか広報担当として、夏祭りのチラシ作りを任されてしまいました。
去年のデータを開き、日付だけ変えて印刷する。
「これなら文句は出ないだろう」
そう思って提出したチラシを見た役員の若手の方に、こう言われたのです。
「佐藤さん、これじゃ誰も来ませんよ」
返す言葉もありませんでした。
でも、どうすればいいのか分からない。
深夜、慣れないパソコンの前で、無料のイラスト素材をあちこちに貼り付けては消し、気づけば時計の針は2時を回っていました。
妻には「早く寝なさいよ」と呆れられ、情けないやら眠いやら……。
5分の会話で、自信作が生まれました
そんな時、娘に教わったのが「AI」でした。
「お父さん、AIに『キャッチコピー考えて』って頼めばいいんだよ」
半信半疑でした。
機械に人間の心が動かせるはずがない、と。
でも、藁にもすがる思いで、パソコン画面に向かってこう打ち込んでみたのです。
「夏祭りのチラシを作りたいんだけど、みんなが来たくなるような言葉はあるかな?」
すると、AIは一瞬で答えてくれました。
『もちろんです。例えばこんな言葉はいかがでしょうか?』
- 「久しぶり!が聞こえる夜。〇〇町夏祭り」
- 「焼きそばの香りと、懐かしい笑顔。今年もこの場所で」
画面を見て、ハッとしました。
私が伝えたかったのは、日時や場所だけではなかったのです。
あの夏祭りの、懐かしくて温かい空気。
それを伝えたかったのだと、AIに教えられた気がしました。
私がAIにお願いしたこと
私がやったことは、本当にこれだけです。
難しい設定やプログラミングなんて、一つもありません。
1. 「誰に来てほしいか」を伝える
ただ「キャッチコピーを考えて」と言うよりも、誰に向けて書くかを伝えると、AIはより良い言葉を選んでくれます。
(私からAIへのメモ)
小さいお子さんがいるご家庭や、最近引っ越してきた若いご夫婦に来てほしいんです。
「ここは温かい町だよ」と伝えたいのですが、いい言葉はありますか?
2. いくつか案を出してもらう
AIが出してくれた案がピンと来なければ、遠慮なく「もっと他のも頂戴」と言っていいのです。
(私からAIへのメモ)
ありがとう。でも、もう少し短くて、ポスターに大きく載せられるような一言もお願いします。
たったこれだけのやり取りで、私のチラシは見違えるようになりました。
「第〇回 夏祭り開催のお知らせ」という無機質なタイトルが、
「この街で、夏の思い出を作りませんか?」という、語りかけるような言葉に変わったのです。
浮いた時間で、提灯の点検ができました
完成したチラシを役員会に持っていくと、以前私に苦言を呈した若手の方が目を丸くしていました。
「佐藤さん、これ凄くいいですね! プロみたいだ」
正直に「実はAIに手伝ってもらったんだよ」と打ち明けると、彼は笑ってこう言いました。
「いいじゃないですか。大事なのは、伝わることですから」
あんなに苦痛だったチラシ作りが、30分で終わってしまいました。
浮いた時間で、私は倉庫に行き、古くなっていた提灯の電球をゆっくりと点検することができました。
AIは、私の仕事を奪う敵ではありませんでした。
不器用な私に知恵を貸し、本来やるべき「現場の仕事」をする時間を返してくれた、頼もしい助っ人だったのです。
今年の夏祭りは、例年よりも少しだけ、明るい夜になりそうです。

